このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
「自己破産すると家族に影響がありますか?」というご質問をいただくことがあります。家族に影響があるかどうか、あるとしてどこまでの影響があるのかは、ご相談者の置かれている状況によっても変わってきます。自己破産をすると家族にどういう影響が出てくる可能性があるのか、順を追って見ていきましょう。
そもそも自己破産はどういう手続きなのかというと、一言で説明すると、「自己破産する本人の財産を破産管財人がお金に換え、そのお金を債権者(借金している先)に配当して、配当しきれなかった分については債権者に勘弁してもらう」という手続きです(非常に大雑把な説明ですが)。そうすると、例えば破産で制限職種につけなくなったりする本人と、貸したお金を返してもらえなくなる債権者が、自己破産で影響を受ける人だということになります。
これだけ見れば家族には影響がないように見えますが、そういうわけではありません。例えば次のようなことが、家族へ影響してくる可能性が考えられます。
自己破産により持ち家を手放さざるを得なくなります。そうなると住み慣れた我が家から引っ越さないといけなくなりますし、場合によっては子どもが転校せざるを得なくなるなど、家族に与える影響としては一番大きいものといえるでしょう。また、解約返戻金もお金に換える対象となりますので、保険が解約されてしまうこともあります。後で改めて保険に加入しようとしても、健康上の理由などで難しくなるかもしれません。ほかには例えば車も換価対象(破産管財人がお金に換える対象)になります。
(備考)東京地裁の場合、99万円未満の現金のほか、特定の種類ごとに見て20万円未満の財産は換価対象になりません。高級車以外の車については、4~6年経っていれば価値はゼロと判断されています。
(備考2)保険を解約したくない場合、解約返戻金相当額を自由財産(=破産しても自由に使える財産)から破産管財人に差し出すことで、保険を維持できることもあります。
本人の財産を家族も使っていたり(ex.自宅)アテにしていたりすることはよくありますね。自己破産で失うのはあくまで破産する本人の財産です。しかし、その反射的影響を家族が受けてしまうことはあるわけです。
家族が保証人や連帯保証人になっている場合があります(ex.夫が住宅ローンを借りる時に妻が連帯保証人になった)。その場合、本人が借金を返済できず自己破産手続きをすると、保証人のほうが返済を求められます。場合によっては、保証人自身も自己破産しないといけなくなるかもしれません。
(備考3)保証人である家族が返済してくれると、本人の借金が減りますので、本人が自己破産しなくてもよくなる可能性はあります(ある意味対外的な借金が減るだけで,身内=保証人への債務は残る場合もあるでしょうが)。
逆に言うと、家族が保証人などになっていない限り、本人の代わりに借金を背負わされるというような影響はありません。
本人が自己破産すると債権者への返済がなくなるので、その分だけ家族の家計(キャッシュフロー)は改善するはずです。ただし悪影響として、自己破産により借り入れをしたりローンを組んだりはできなくなりますし、カードも使えなくなりますので、その意味で生活上の不便をこうむる可能性はあります。
(備考4)自己破産して免責を受けたのに7年以内にまた破産したい(免責を受けたい)というのは、それ自体が免責不許可事由となってしまいます(裁量免責の可能性はありますが)。破産して免責を受ける以上は、借り入れに頼らない生活を送ることが必要です。
もっとも不便とは言っても、クレジット機能無しのETCカードも発行されていますし、クレジットカードを使わないで済む決済手段もあります。これらを利用することで、不便はある程度解消されると思われます。
たとえば破産する本人が家族と不動産を共有しているような場合だと、破産管財人は本人の持ち分を換価処分することになります。「不動産全体を売却して、お金の形で全員で分けてしまいたいから協力してほしい」とか「本人の持ち分を買い取ってほしい」というように、家族が破産管財人から頼まれることもあります。
本人が自己破産しても、家族が持っている財産まで失うわけではありません。しかし場合によっては、自己破産手続きに事実上巻き込まれてしまう(何らかの関与をせざるを得なくなる)こともある、ということです。
自己破産で影響を受けるのはまず何よりも本人と債権者ですが、家族への影響が出てくることもあります。
家族へどんな影響があるかというと、大きなものとしては、自己破産で家などの財産を失うことが挙げられます。家族が本人の保証人などになっている場合には代わりに返済するよう要求されますから、その家族自身も自己破産しないといけなくなるかもしれません。自己破産すると借入れはできなくなりカードも使えなくなりますから、生活に不便が出てくる可能性はあります。自己破産して家族の財産まで取られたり家族が手続きに関与しなければならなくなったりすることは、原則としてありません。しかし場合によっては、事実上手続きに巻き込まれてしまう可能性はありえます。
自己破産すると家族への影響が出てくる可能性はあります。しかしだからといって、返済が難しい状態になっているのに手続きをせずそのままやり過ごそうとしても、いつかは破綻してしまいます。破産したからといって全ての財産を手放すわけではありません。自己破産の手続きを進め、借金の重荷から解放された新たな一歩を踏み出すべきでしょう。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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