このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
破産管財人とは、破産手続において、破産する方の財産の管理をしたり、処分してお金に換え、債権者(=破産する人にお金を貸していた人)に配当したりする権限を持つ人のことです。破産管財人は、破産事件ごとに、裁判所によって選任されます。
破産管財人は、言ってみれば債権者の代表のような存在ではあるのですが、債権者の利益だけを考えているわけではありません。破産者(=自己破産した本人)も含めた利害関係人全てに対して、公正・中立な立場を保つことが要求されているのです。
破産管財人になるための資格は、法律上特に決まりはありませんが(「職務を行うに適した者を選任する」とはされていますが)、実際には専ら弁護士が破産管財人に選任されます。
破産管財人の仕事は色々ありますが、破産管財人にとって一番重要なことは、財産をきちんとお金に換えて債権者に配当すること、と言えるでしょう。
自己破産する人にとっては、財産のことだけではなく、破産管財人によって行われる免責調査が非常に重要です。
破産管財人の仕事の主要な業務は、破産者の財産の調査、管理、換価処分を行うことです。
これらの業務は、破産者の方の財産のうち、「破産財団」と呼ばれる財産に対して行われることになります。
破産財団とは、破産者の方の財産であって、「破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」をいいます(破産法第2条14号)。
破産手続が始まった時に破産者が持っていた財産は、国内にあるかどうかを問わず、原則全て破産財団になります。しかし、99万円までの現金と差押禁止財産は、破産財団から除かれます(破産者が持ち続けていて良い)。
破産財団は、原則として全てお金に換えられて、債権者への配当原資になっていきます。もっとも、裁判所の取り扱いとして、ある一定基準までの財産はお金に換えないと定められていることがあります(東京地裁なら20万円以下の一定の財産)。
要するに、①債権者に配るお金のもとになる財産を集めたものを破産財団といい、②どういう財産があるのかをきちんと調査・管理してお金に換えていく(=破産財団を増殖させ換価処分する)のが、破産管財人の仕事なのです。
自己破産する人は、破産申立時に、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金等の財産を記載した書面を裁判所に提出します。
破産管財人は、上記の申立書類を確認し、たとえば預貯金の取引履歴などから、不明な引き落としや、不当な財産の流出がないかなどを精査します。そのうえで、不明点を整理して、申立人(=自己破産を申立てた人。破産者)やその代理人弁護士(=申立代理人。破産手続きを依頼した弁護士)に対して、説明や追加資料の提出を求めます。
また、通帳の引き落とし欄を見て、財産目録に挙げられていない金融機関や保険会社の記載があったような場合には、破産者や申立代理人に確認したり、それらの業者に対して照会文書を送付したりして、漏れている財産がないかを調べます。
さらに、破産者の方が破産申し立て前に偏頗弁済(=えこひいきした特定の人への返済)を行うなどして、本来は破産財団になるはずだった財産が流出しているということがないかどうかを確認します。
破産管財人は、裁判所の許可を得て、破産者宛の郵便物を転送させて自ら受け取り、開封して確認する権限も有しています。何のためかというと、主に破産者が財産隠しをしていないかどうかを調べるためです。
破産手続が始まると、財団債権の管理処分権は破産管財人のみに認められます。破産管財人は、破産管財人に就任したあと、直ちに破産財団に属する財産の管理に着手します。破産者の会計の状況を管理・把握するために、帳簿などを管理することもできます。言い換えると破産者の方は、財産を自由に管理・処分することができなくなります。
もし、破産者が破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡さない場合には、破産管財人は、裁判所に対して、財産の引渡命令の発令を求めることもできます。
あるいはもし、たとえば破産者が破産財団に属する財産をタダで第三者に贈与してしまったような場合には、破産管財人はそれを否定して、破産財団から流出した財産を取り戻すこともできます(否認権行使)。
破産管財人は、破産手続開始後、破産手続開始に至った事情や、破産者・破産財団に関する経過報告及び現状などの必要な事項を記載した報告書を裁判所に提出します(破産管財人が第1回債権者集会で報告します)。
破産管財人は、破産財団に属する財産を債権者への弁済に充てるために、これらの財産をお金に換えます(換価)。換価方法や換価時期については、破産管財人の裁量にゆだねられています。
どのように換価するかについて法律上決まりはありませんが、通常はその財産を第三者に売ってお金に換えます。破産管財人は、破産財団に属する財産を、最も高くお金に換えられる方法で換価しなければなりません。
破産管財人は、破産財団に属する財産をお金に換え終わったあと、債権者へ配当できる原資がある場合には、債権者への配当を行います(ほとんどの場合、配当できる金額が1000万円未満の「簡易配当」です)。
破産管財人は、換価終了後、破産財団の金額などを裁判所に連絡します。その後債権者集会で、簡易配当予定であることを報告します。配当表などを裁判所書記官に提出すると、簡易配当の許可が出されます。この配当表というのは、配当手続に参加することができる破産債権者の氏名・名称及び住所、配当に参加できる債権額、配当をすることができる金額を記載した表のことです。そして簡易配当許可に基づいて、届出債権者に対して配当見込額などを通知することになります。
債権者への配当を行ったあと、破産管財人は、計算報告書などを裁判所に提出します。そして、任務終了・計算報告のための債権者集会で報告を行い、破産手続が終了(破産管財人の業務も終了)となります。
破産手続きは、破産者の財産を精算する手続きです。そして、借金を支払う責任から免れさせてよいかどうか(=免責を与えて良いかどうか)を裁判所が判断する手続きを、「免責手続き」といいます。自己破産をする目的は借金の責任を免れるため(免責を受けるため)ですが、破産手続きと免責手続きは、法律上は別のものです。
実務上は、破産管財人が免責を与えて良いかどうか調査し、自分の意見を裁判所に報告します。そして裁判所は、破産管財人の意見に基づいて結論を決めています。
破産管財人の調査は、申立人(破産者)との面接が主なものですが、破産管財人の進める破産手続きに協力してきたか、破産管財人からの質問や宿題にきちんと対応してきたか、といったことも考慮されます。浪費などの「免責不許可事由」がある場合でも同様です。手続きにきちんと誠実に対応すれば、破産管財人から免責相当(=免責を与えてよい)という意見をもらえる可能性は、十分あります。
破産手続が開始された時点で、すでに破産財団に関する訴訟が提起されている場合があります。その訴訟手続は、破産手続開始決定によって中断されます。破産管財人は、この訴訟を破産者から引き継いで、当事者として訴訟を進めることができます。
破産財団に関する訴訟とは、破産財団に属する財産の引渡しや支払いを求める、あるいは求められる訴訟などがあります。
破産手続開始後に提起された破産財団に関する訴訟については、破産管財人が訴訟の当事者となります。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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