このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
借金の返済が苦しくなってきたときには、債務整理をして生活の立て直しを図るのが一番の解決方法です。
借金返済にお悩みの方の中には、働いていたときには問題なく返済できていたが、無職になってしまい返済が厳しくなってしまった、という方もおられます。
職がなく、収入がないという理由で、債務整理できないのではないかと躊躇しておられる方もいらっしゃるかと思います。
実は、無職であっても債務整理は可能なのです。
ただし、職に就いている方と比較すると、選択できる債務整理の手段は限定されます。
この記事では、無職の方でもできる債務整理の方法をご紹介いたします。
債務整理の方法は、主に次の3種類があります。
無職の方の場合、これらの3種類の方法の中で、選択することが難しいものと、向いているものがあります。
それぞれの方法について、以下で解説いたします。
任意整理とは、借入先との交渉によって、利息のカットや、返済計画のリスケジュールを行う手続です。
任意整理は、基本的に借金のほぼ全額を返すことを前提に、返済計画を変更して月々の返済額を減らすことがメインの方向性となります。
そのため、無職のため月々返済に充てられるお金が全くない、あるいはほとんどないという場合には、任意整理を行うことは事実上難しいと思われます。
債権者によっては、「和解合意に応じる代わりに勤務先を教えて欲しい」と要求してくることがあります。
その場合、もし勤務先を教えることができないと(=無職だと分かると)、債権者が和解合意を拒否してくることもあります。
もっとも、無職でも任意整理ができる場合もあります。
「今は無職だが近いうちに就労する確実な予定がある」
「親族などの支援などによって、月々の返済に充てられる資金がある」
例えばこういう場合には、任意整理を行う余地がありえます。
任意整理で最も重要なことは、支払原資が確実かどうか(=毎月の支払を最後まで支払っていけるか)だからです。
とはいえ、どうしても債権者がそれを信用してくれない場合、合意に至ることができず任意整理が失敗してしまいます。
自己破産は、借金を返済することができなくなってしまった方について、その借金を免除して、生活の立て直しを図るための、裁判所を通じた手続です。
自己破産では、借金の返済を前提とする任意整理や個人再生と異なり、一部の例外を除いてすべての借金を返す必要がなくなります。
無職の方であっても、自己破産は可能です。
というよりもむしろ一般論としては、自己破産は、無職の方に最も適した債務整理の方法ともいえるでしょう。
ただし、予納金(破産管財人の報酬。東京地裁では最低20万円)の支払いが原則必要になってきます。
自己破産の申立てが認められるための要件は主に次の2つです。
支払不能とは、現在および将来的な債務者の方の収入や資産の状況に鑑みて、借金を継続的に返していくことができないと客観的に判断される状態をいいます。
ただし無職で収入はなくても資産はあるというような場合、その資産についてお金に換えることが難しいという状況ではない場合には、支払不能とはいえないと判断されます。
また、支払不能といえるためには、「継続的に」借金を返すことができないことが要件となります。
「一時的に無職になっているが、近日中にまた収入が復活する」という場合には、支払不能ではないと判断される可能性があります。
免責不許可事由とは、自己破産で借金の免除を認めることがふさわしくない事情として法律に定められている事由(事柄)です。
免責不許可事由があると免責不許可になる(=借金の免除を受けられなくなる)、と法律で定められています。
免責不許可事由の一例は、次のとおりです。
支払い不能状態であっても、このような免責不許可事由がある場合、借金の免除が認められなくなることがあります。
そのため、免責不許可事由に該当するような事情がないか、よく確認しておく必要があります。
もっとも実際は、免責不許可事由がある場合でも、免責不許可に直結するわけではありません。
むしろほとんどの場合、免責が認められています。
裁判所の裁量によって免責を認めてよい、という制度があるからです(「裁量免責」といいます)。
個人再生は、借金を返済することができなくなってしまった方について、裁判所を介して借金を減額して、生活の立て直しを図るための手続です。
個人再生では、借金の元本についても大きく減額されますので、任意整理よりも大幅に借金を減らすことができます。
債務者の方は、減額後の借金を、原則3年以内に返済していくこととなります。
個人再生は、このように減額後の借金を返済することが必要となりますので、返済に充てることのできる定期的・継続的な収入が必要となります。
これがない場合、裁判所から個人再生を認めてもらうことはできません。
たとえば小規模個人再生なら「継続的に又は反復して収入を得る見込み」が必要です(民事再生法221条)し、給与所得者等再生なら「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込み」が必要です(同法239条)。
したがって、今後の就職の見込み等にもよりますが、個人再生を利用することは基本的に難しいということになります。
無職ではなくたとえば短期間のアルバイト実績しか無い場合も、将来も継続的に収入を得る見込みがあるかどうか疑問である、というようにも言われています。
無職だからといって債務整理ができないというわけでもありません。
もっとも、自己破産は債務を返さない手続きであるのに対し、任意整理と個人再生は債務を返していく手続きです。
今後の就職の見込みなどにもよりますが、債務を返していく手続きをするのは事実上難しいのではないかと考えられます。
どういう方向性がよいのかは、専門家に相談してみましょう。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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