このコラムの監修者
-
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
任意整理をして分割払いの示談をすると、おおむね36回=3年程度の長期間をかけて支払っていくことになります。
任意整理で示談がまとまっても、完済するまでには長期間かかりますので、その間に収入が下がったり、不意の出費で支払い困難になってしまったりすることもありえます。
このように、任意整理した後で支払いをもし滞納してしまったら、どうなるのでしょうか。また、どうしたらいいのでしょうか?
任意整理した後で滞納してしまった場合でも、借入先(任意整理先)からの督促連絡にきちんと対応すれば、あるいは自分から借入先にすぐ連絡して事情を説明すれば、大ごとにならずに済むこともあります。たとえば支払いが数日遅れてしまったような場合であれば、すぐ入金すればあまり問題にはならないのではないかと思われます。
しかし、任意整理後に滞納して、借入先からの督促連絡があったのに無視していたりすると、大ごとになってしまいます。この場合、たとえば次のような事態が想定されます。
その結果、自己破産などを検討しないといけなくなる可能性も出てきます。
任意整理で分割払いの示談をして、たとえば「残額40万円、月2万円×あと20回の支払いが残っている」という時に滞納したとします。
借入先からは、「残額40万円をまとめて一括で支払え」と請求されてしまいます。任意整理をした際の示談書(合意書)に、「もし滞納したら一括で請求する」という意味の文言が入っているからです。
では何回分滞納したら一括請求されるのかというと、これは任意整理の示談書の内容によります。「2回分滞納したら」というケースが比較的多いようには思われます。
この一括請求をされる場合、元金(40万円)だけではなく、次に述べる遅延損害金をも支払わないといけなくなります。
任意整理をした結果、将来利息(完済までの利息)をカットして単純な分割払いになっていることが多いかと思います(ex.2万円×20回=40万円)。
しかし任意整理後に滞納してしまうと、先に述べた一括請求のほかに、遅延損害金も請求されることが通例です。上記の例なら「40万円に、実際に支払う日までの年●%の遅延損害金を上乗せして、一括で払え」と請求されることになります。
(備考)遅延損害金の利率は、任意整理をした際の示談内容で決められていることが多いです。
任意整理の残額を一括払いするだけでも、多額に上ることも多いでしょう。さらに遅延損害金が上乗せされると、支払困難な状況になりかねません。
任意整理では、弁護士と借入先(任意整理先)が、裁判所の外で(任意交渉で)示談書を取り交わす形が基本になります。
この形の場合、任意整理の残額+遅延損害金を一括で支払えない場合でも、借入先がいきなり給料差し押さえなどの強制執行をすることはできません。
(備考2)仮に裁判上の和解などで分割払いを約束した場合には、滞納すると、強制執行される可能性があります(借入先としては、改めて裁判などをしなくても強制執行は可能です)
強制執行をするために、借入先が、訴訟や支払督促などの法的手続きを進めてくる可能性が高くなります。家族に秘密で任意整理をしていたとしても、訴状などが自宅に届くことで、債務の存在を家族に知られてしまうかもしれません。
訴訟(和解、判決)や支払督促が確定したのにそれでも支払わないでいると、強制執行される可能性が出てきます。
任意整理が成立して弁護士との契約が終了している場合、あなたから業者に連絡をして事情を説明しておくべきでしょう。
任意整理が成立して、弁護士を通じて借入先に支払っている場合があります。この場合には、すぐにその弁護士に連絡しましょう。
滞納しそうといってもいろいろな状況がありえますが、もしかしたら、この時点で自己破産を検討すべき状況に陥っているかもしれません。現状を取りまとめたうえで弁護士に再度相談してみるのも良いでしょう。
任意整理後の滞納が少しの遅れで済みそうな場合は、きちんと対応すれば、あまり問題にはならないことが多いでしょう。
支払期日より前に遅れそうだと分かっているなら自分から事前に連絡して事情を説明するとか、借入先から督促連絡を受けて滞納に気づいたのなら極力早期に入金するとか、誠実な対応を心がけましょう。
任意整理後に滞納してしまい一括請求を受けた場合に、再度任意整理をして分割支払いの形を復活できるのでしょうか。
借入先が応じてくれるなら、再度の任意整理も可能です。
もっとも、一度任意整理したにもかかわらず滞納してしまった、しかも少々の遅れにとどまらず一括請求されるほどの滞納をしてしまったというマイナスポイントがありますので、ハードルが上がってしまう可能性は否定できません。
任意整理後の滞納がうっかりミスによる場合はともかく、任意整理の毎月の支払いが厳しいときに残額を一括で請求されても、支払うのは困難なことが多いでしょう。月々の2万円の支払いが厳しくて滞納してしまった場合に、40万円+遅延損害金を一括で支払わないといけないというのは、かなり難しいものと思われます。そうなると、自己破産や個人再生を検討しないといけないかもしれません。
(備考3)たとえば自己破産なら「支払不能」という法律上の要件を満たしていることが必要です。「A社から一括請求された40万円を払えない」からといって、それならすぐに自己破産ができるかというと、それはまた別問題です。
個人再生では、任意整理よりは返済額が圧縮される可能性はありますが、返済が長期間続くことは同様です。そのことを考えると、一般論としては自己破産のほうが望ましいのかもしれません。
任意整理の滞納が少しの遅れに留まる場合には、すぐに入金するなど誠実に対応すれば、それほど大ごとには至らずに済むことが多いかと思われます。
任意整理後の滞納が長期間になる場合、たとえば2回分滞納したような場合は、残額と遅延損害金を合わせて一括で支払えと請求されてしまいます(何回滞納したら一括請求されるかは、任意整理の示談書の内容によります)。
任意整理後の滞納が収入減少や家計状況悪化による場合、その状況で一括支払いはかなり難しいでしょうから、自己破産などを検討する必要もでてくるものと思われます。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
個人事業主の方であっても、自己破産をすることができます。 もっとも、個人事業主の方は、個人であると同時に、事業者としての側面を持っており、非事業者の方と比べて、契約関係や財産関係が複雑である...
1 破産管財人とは 破産管財人とは、破産手続において、破産する方の財産の管理をしたり、処分してお金に換え、債権者(=破産する人にお金を貸していた人)に配当したりする権限を持つ人のことです。破...