このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
任意整理を行い、新しい返済計画に従って返済をしていくことを一度は決意した場合であっても、さまざまな要因によって、返済し続けることが難しくなってしまうことがあります。たとえば次のような例が考えられます。
任意整理で取り決めた返済計画に従って返済できない状況が続くと、債権者から、借金の残額全額について一括で支払うように求められてしまいます。なぜなら、任意整理の時に債権者との間で交わされる和解契約において、一定金額返済を怠った場合には、残額については分割払いができず一括払いとなるという、「期限の利益喪失約款」が定められていることがほとんどだからです。
月々の返済が滞ってしまうような経済状況で、残りの借金を一括で返済することが到底できないという方がほとんどでしょう。そうなると、その借金自体の返済義務をなくすために、自己破産を検討することになります。
任意整理後であっても、破産をすることはもちろん可能です。
任意整理をすることによって、任意整理前より月々の返済の負担は軽くなりますが、その後の生活状況の変化などによって、どうしても月々の返済できなくなってしまうことがあります。このように、借金を継続的に返済してしまうことができなくなった状態を「支払い不能」といい、このような状態になってしまった場合には、破産の手続を開始してもらう要件を満たすことになります。
任意整理で取り決めた新たな返済計画に従って返済ができなくなってしまった場合に、自己破産ではなく、再度の任意整理を希望される方もおられます。
自己破産については、強いマイナスイメージをお持ちの方も多いことや、資格制限などの制約もあることから、自己破産の選択を避けたいという場合があります。このような場合に、再度の任意整理ができるかというと、結論としては「債権者(借入先)次第」になります。
任意整理は、自己破産と異なり、期間や回数などの制限がないため、建前としては、いつでも、何度でも行うことができます。しかし、任意整理は債権者との交渉事ですので、債権者が再度の任意整理に応じなければ、行うことができません。
一度目の任意整理で取り決めた返済計画通りに返済できない場合、債権者から債務者の方への、返済についての信用が大きく損なわれており、交渉に応じてもらえない可能性が高くなるのです。
任意整理で取り決めた新しい返済計画は、多くの場合、その返済計画であればなんとか今後も返済していける、というものになっているはずです(もちろん、債権者との交渉事ですから、少し無理のあるものでも受け入れざるを得なかったというケースもあるでしょう。)。
しかし、任意整理のあとに仕事を退職せざると得なくなり収入が減ってしまったり、ご自身やご家族が病気になり多額の治療費が必要になったりするなど、様々なご事情で返済し続けることが難しくなってしまう場合があります。
このように、やむを得ない事情によって返済が難しくなった場合、とくに自己破産をするうえで問題は生じませんが、無駄遣いをしたせいで、返済できなくなった場合は注意が必要です。具体的には、収入に見合わない高額なショッピングや、パチンコや競馬、株などのギャンブルによってお金を消費してしまっている場合です(任意整理で返済中なのにわざわざ浪費するのはあまりないことかもしれませんが)。
無駄遣いなどのような相応しくない事情(「免責不許可事由」といいます。)がある場合には借金を免除してもらうことはできない、というように破産法では定められています。失業などやむを得ない理由で破産せざるを得ない場合に比べれば、免責を受けるための障害が増えてしまうことになりかねません。実際には、破産管財人の調査に協力するなど、誠実に破産手続きを遂行していけば裁量免責が認められる可能性もありますが、だからといって浪費して良いわけではありません。
免責不許可事由の1つに、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」というものがあります。これは、すべての借入先に対して借金の全額を返済できなくなってしまった状況において、一部の借入先に対してのみ返済をしてしまう行為です。
自己破産の手続においては、債権者の平等が重視されており、一部の債権者だけに得をさせることは、良くないこととされています。
任意整理においては、すべての債権者を対象とする必要はなく、任意に選んだ債権者のみを対象とすることもできます。例えば、A社とB社には受任通知を送付して一旦返済をストップさせ、支払月額減額の方向で交渉し、話がまとまったらそれに沿って支払っていく。受任通知を送付しなかったC社に対しては従来通り返済を続ける、ということも可能です。
しかし、例えばA社とB社に支払をストップしているうちにC社に完済して自己破産したような場合、どうなるでしょうか。自己破産という手続きを利用してC社だけに利益を与えた、ということで偏頗弁済が疑われ、破産手続き上問題となるかもしれません。
任意整理から自己破産へ移行する際には、偏頗弁済も含め、色々な点で注意が必要です。任意整理後の自己破産をご検討の方は、お早目に弁護士にご相談ください。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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