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借金が時効になる条件は?

借金の時効消滅

「その借金はもう時効だ」といったセリフをドラマや小説で耳にされたこともあるでしょう。借金を業者(貸主)に返す義務(債務)は、長い期間が経つと、時効で消滅することがあります。これを借金の時効消滅(消滅時効の成立)といいます。

借金の時効消滅で最も重要なことは、「時間が経てば自動的に借金が消えるわけではない」ということです。時効消滅にはいくつかの条件があり、大まかに言えば①時効期間が満了することと②時効援用の手続きが必要です。では具体的にどうすれば借金が時効となり返済しなくてよくなるのか、以下で見ていきましょう。

【補足①】 消滅時効については平成29年民法改正で変更があり、改正前から大きく変わった点があります。その点も含め、本コラムではできるだけ分かりやすさを重視して説明していきたいと思います。その代わり内容の正確性が損なわれることもあるでしょうが、悪しからずご容赦ください。

【補足②】 本コラムで念頭に置いているのは、個人から借りた借金ではなく、業者(銀行、カード会社、消費者金融など)から借りた借金についてです。

条件①消滅時効期間満了(時効の期間が過ぎていること)
時効期間の満了

借金の時効消滅が認められるには、「一定の期間が過ぎたこと」がまず必要です。一定の期間とはどれくらいか?というと、多くの場合5年、一部の場合に10年です。

一定の期間≒5年

借金が業者から借りたものの場合、大雑把に言えば「業者への支払期限の翌日から5年」となります。「業者に最後に返済してから5年」「業者に5年以上返していない」という表現をすることもあります。どちらにせよ、分かりやすさを優先したおおまかな説明をしているだけであり、厳密なものではありませんのでご注意ください。

場合によっては10年経たないと消滅時効が認められないこともあります。また、支払期限の翌日からカウントしないこともあります。そのため、「もう時効だろうと思っていたら、実はまだギリギリ時効期間が満了していなかった」(消滅時効に必要な期間が過ぎていなかった)という場合もありえます。

消滅時効の期間はいつからカウントするの?

借金の消滅時効を認めてもらうための期間が仮に5年だとして、それはいつからカウントするのでしょうか。これは「期限の利益を喪失した日の翌日から」です。つまり、返さないといけなくなった日の翌日からカウントすることになります。

「期限の利益」とは何かというと、たとえば2万円を4月末までに返す契約なら、逆に言えばそれまでは返さなくてよいことになりますね。この、「いついつまでは返さなくてよい」というのが期限の利益です。業者から借金をする時の契約書には、例えば「1回でも支払いを怠った場合には、全額について当然に期限の利益を失う」というように書かれています(これを「期限の利益喪失約款」といいます)。期限の利益を失うと、業者の立場から言うと「今すぐ払え」と請求できることになります。

たとえば「1回でも支払いを怠った場合には全額について当然に期限の利益を失う。残りの借金は50万円。2万円を4月末までに払うことになっていたが、支払えなかった」という場合、その年の5月頭に、業者は50万円を一括請求できることになります。50万円全体についての消滅時効の期間も、その年の5月頭からカウントすることになります。

【補足③】業者からの借金の場合、「●●の事実があったら『当然に』期限の利益を失う」とされていることが非常に多いです。ところが、「●●があったら当然に」ではなく、「●●があった場合に貸主が請求したら失う」とされている場合もあります。この場合には、業者が請求した日の翌日から消滅時効期間をカウントします。

時効期間満了かどうか、どうやって確認するの?

時効期間がいつ満了するかをどうしても確実に知りたいということなら、あなたから業者に問い合わせるという方法が考えられます。もっとも、業者に問い合わせたことでかえって請求が激しくなってしまったり(寝た子を起こしてしまう)、問い合わせだけで済まそうと思ったのにそのまま債務承認(返すと約束させられる)に誘導されてしまったりする可能性があります。そのため、この方法はあまり現実的ではないと思われます。

では手元の資料で確認できるかというと、ほとんどの場合、契約書や最終支払日が分かる明細などの証拠は残っていないでしょう(たまたま返済した際の明細が残っていても、それが最後かどうかは分かりません。)。そのため、借りた本人の記憶に基づいて、「下の子が小学校に上がってから返せなくなった。たぶん7年前だ」というように判断するしかないと思われます。

【参考】平成29年民法改正
細かい話なのでごく参考までにと思いますが、平成29年民法改正前は、借金の消滅時効に必要な期間は民法、商法などで定められていました。「時効は民法では10年、商法では5年」というのを聞いたことがある人もいるかもしれません。業者からの借金については、多くの場合商法が適用されて5年となっていました(例外的に信用金庫や信用保証協会など10年の場合もありました)。逆に5年より短い期間が定められているものもありました。

平成29年民法改正後は「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」か「権利を行使することができる時から10年」で消滅時効の期間が満了することになりました(改正後民法166条。商事時効についての規定(商法旧522条)も廃止されました)。
改正民法の施行日は令和2年4月1日ですので、その日以降は原則として改正後民法が適用されます。しかし、それより前に借りた借金の場合、消滅時効の期間については改正前民法の内容によります。
参照:附則10条4項「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による」

実際問題として、借金をする場合は銀行、カード会社や消費者金融から借りることが多いでしょう。そのため、借金をしたのが民法改正前でも後でも、どちらにせよ5年で消滅時効期間が満了することが多いと思われます。もっとも前述のとおり、民法改正前では信用金庫からの借金の時効期間は10年とされていましたし、何でもかんでも5年で消滅時効となるわけではありません。

条件②時効援用すること(消滅時効だから返さないという手続きをしたこと)
消滅時効の援用

消滅時効の援用というのは、一言で言うと「借金は消滅時効で消滅したから返す義務はない。だから返さない」と主張することです。消滅時効を援用して初めて、借金が時効で消滅します。例えば、借金を一括請求されたのが5年以上前のことであったとしても、5年以上経過したら自動的に借金が消滅するというわけではありません。

時効援用を書面でしなければならないというような決まりはありません。しかし、時効援用したことを後で証明できるようにしておくべきです。一番確実なのは内容証明郵便です。内容証明郵便は、「こういう内容の書面をいつ業者に届けた」ということを明確にできるからです。1行20字×26行などというように形式が決められており、差し出しはインターネット上からも可能です(登録が必要です)。

時効援用をしようとする際、既に業者から訴えられている場合(裁判所から訴状が届いた場合)には、内容証明郵便ではなく「答弁書」などの書面で時効援用をすることになります。原告(業者)に対して消滅時効を援用したことを、裁判所に知らせないと意味がないからです。内容証明を出したとしても、答弁書を出さず裁判に全く対応しないと、いわゆる欠席判決で原告の言い分どおりの判決が下されてしまいます。

条件③判決や債務自認行為などがないこと(時効が認められない事情がないこと)

一例として「借金を消費者金融会社に最後に返済したのが5年以上前だと記憶しており、内容証明郵便で時効援用をした」という場合を考えてみます。調べてみると最終返済が実は10年前で、内容証明郵便で書いた内容に不備などがなかったとしても、借金が時効消滅しないこともあります。

実際には時効期間が満了していなかった…

たとえば、「実は判決を取られており、消滅時効に必要な期間はそこから10年になっていた」ということがあります。最終返済の4年後に判決を取られていたとしたら、まだ6年しか経っていないわけですから、まだ消滅時効期間は満了していません。

時効期間満了後に債務自認行為があった…

また、「3年前の段階で、5年の時効期間が満了していたのに(時効だと知らなかったので)消滅時効を援用せず、一部を返済した」という場合もあります。この場合、後になって「よくよく考えたら時効だったからもう返さない」と言ったとしても、認められないことがあります。時効期間が満了している状態で一部を返済したということは、債務があると自ら認める行動をした(自認行為をした)ことになります。そのことで業者に「債務を返済してもらえる、消滅時効の援用はしないようだ」と期待させたのに、その後でやっぱり時効だというのは、矛盾した行動だからです(最高裁S41.4.20判決)。

もっとも、時効期間満了後に債務自認行為をしたらそれだけで即ちにダメ、というわけではありません。色々な事情を考慮すると時効を認めるべきだ、と裁判所が判断してくれることもありえます。ちなみに、自認行為をしてからさらに消滅時効期間が満了すれば、その後から時効を援用することは可能です(最高裁S45.5.21判決)。

【参考②】時効期間「満了前」に債務を承認すると、時効期間がそれまでに4年11ヶ月が過ぎていたような場合でも、カウントはゼロに戻ります。カウントを数え直すことをH29改正前は「時効の中断」と呼んでいましたが、改正後は「時効の更新」と呼んでいます。

借金の消滅時効援用が成功したら、その後どうなるの?
借金が消滅したという一筆はもらえる?

業者から督促の葉書や手紙が届いたのに対して、こちらが消滅時効を援用するという通知を内容証明郵便などで出してみて、業者が時効を認めるのであれば成功ということになります。借金は時効で消滅しますので、返す義務は無くなります。では、業者が時効を認めるならその旨の一筆ももらえるのかというと、そうとも限りません。借金を返す義務はもうないという内容の和解書(ゼロ和解書)を取り交わすことができる場合もありますが、できない場合もあります。業者としては、ゼロ和解書を取り交わす労力や郵送費などをかけたところで一銭の得にもならないからです。もっとも、もし取り交わしができない場合でも、請求が来ることはなくなります。

業者から訴訟提起された(裁判所から訴状が届いた)場合に時効援用をするときは、答弁書などの裁判の書面ですることになります。もし業者が「消滅時効が成立していることを争えない、裁判に負けそうだ」と考えた場合には、訴訟を継続してもコストの無駄ですので、訴えを取り下げたいと言ってくるかもしれません。その場合、取下げに同意する代わりに裁判外でゼロ和解書を取り交わせ、と要求することになるでしょう。双方が裁判に勝てると考えた場合には判決に至りますが、裁判所が消滅時効を認めてくれれば、「原告(業者)の請求を棄却する」という判決が出されます。その判決が、借金が無くなったことの一筆となります。

信用情報について

業者からの借金を滞納すると、いずれ信用情報機関に事故情報が載ってしまいます(いわゆるブラックリストに載ってしまう状態)。時効ではないかと思われるほど滞納を続けているのなら、事故情報が載っている可能性が極めて高いです。

消滅時効の援用で借金を業者に返す義務がなくなった場合、JICC(信用情報機関の一つ)であれば早期に事故情報が消える取り扱いのようです(JICCのHPを参照)。ただし他の信用情報機関の場合、5年程度事故情報が載り続けることもあるようです。

もし消滅時効を援用しないと、基本的には事故情報が載り続けてしまうことになります。それよりは、時効援用の手続きをして、「いつかは事故情報を消してもらえる」という形にするほうが良いのではないかと思われます。

【参考③】既に述べたとおり、時間が過ぎただけで借金が自動的に消えることはありません。
信用情報についてどうのこうの言う以前に、時効援用をしないかぎり、借金を返す義務は残り続けていることに注意が必要です。

まとめ
借金が時効になる条件

消滅時効期間が満了したこと、消滅時効を援用したことです。消滅時効期間は、業者からの借金である場合は5年であることが多いですが、10年の場合もあります。消滅時効期間のカウントは、業者との契約書で「当然に期限の利益を失う」とされていることが実際には多いため、期限の利益を失った日の翌日から始まります。消滅時効の援用をしていないのに、時効期間が満了しただけで借金が自動的に消えることはありません。今まで業者が督促してこなかったのは、借金が消えたからではないのです。

業者からの借金を5年以上払っていないなら…

業者からの借金に関するご相談で、「終わったと思っていた借金の督促が突然届いた」という方は少なくありません。弁護士から時効援用通知を送ると、業者が時効を認めて督促してこなくなることもよくあります。名の知れた大手消費者金融や債権回収会社から督促が来ている場合であっても同様です。非常に大雑把に言って、業者からの借金を5年以上払っていない記憶なのであれば、消滅時効の援用が成功する可能性はあります。

★注意点…弁護士に相談を

「借金を5年以上返していないから、消滅時効援用の手続きをすれば確実に借金が無くなる」とまでは言えません。消滅時効期間が満了していると思って時効援用をした場合でも、「実はまだ満了していなかった」とか「満了後に債務を返さないといけないと自ら認める行為をしたので、時効が認められない」という場合もありえるからです。したがって、消滅時効は間違いないと軽々しく考えるのは禁物です。あなた自身が業者に連絡を取ると、債務を認めさせられたりするかもしれません。それよりもまずは、弁護士に相談してみるべきです。

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

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