このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
ローンの返済やクレジットカードの支払いを長期間延滞してしまうなどのように、借金を滞納すると、貸主である銀行やカード会社は、どのような行動に出るのでしょうか。
まずは、借主の方に対して、督促状を送ったり、電話を掛けたりするなどして、自発的に借金をすぐに返すように求めます。
それでも借主の方が借金を返さない場合には、貸主は、借主の方に対して、貸金を返すことを求める民事訴訟を提起します(支払督促の場合もあります)。
そして、貸主が勝訴した、「いくらずつ返す」という和解が成立した、それでもなお借主が返済しない場合には、最終手段として「強制執行」を行います。
その強制執行の1つの手段が、給与の差押えなのです。
差押えは、滞納があればすぐできる、というわけではありません。
差押えをするためには、確定判決や和解調書など、法律で定められた文書(債務名義といいます。)が必要となるのです。
そのため、裁判(や支払督促)を経てから差押えが行われる、ということになります。
サラリーマンなど、会社で働いている方が給与をもらうことができるのは、法律的にみると、その働いている方が会社から給与を支払ってもらえるという権利(給与債権)を持っているからです。
この給与債権を差し押さえると、差押をした人(借金の貸主)は、会社から直接お金の支払いを受けることになります。
逆に言うと、差押えをされてしまった人は、その分は会社から給与を受けられません。
多額の借金を負っている場合、場合によっては何か月分もの給料を全額充てなければ返済しきれない、という場合もありうるでしょう。
しかし、月々の給料をすべて差押えられてしまっては、たちまち日々の生活に困ってしまいます。
そのため、法律で、月々の給与を全額差し押さえることはできないようになっています。
給与は、税金等を控除した残額の4分の1までしか差押ができないと定められているのです。
具体例でみていきましょう。
借金を100万円滞納し、裁判の結果、貸主に対して100万円を支払わなければならないという判決が出たとします。
そして借主の給料月額は、税金等を控除した残額が20万円だったとします。
すると、1か月に差し押さえられてしまう給料の額は、20万円の4分の1の額である5万円となります。
これが100万円に達するまで、毎月会社から貸主に対して支払われることになります。
なお、税金等を控除した残額が44万円以上の場合には上記の計算とは異なり、そこから33万円を差し引いた額が差し押さえの対象となります。
また、ボーナスや退職金も差押えの対象となります。
給与が差し押さえられると、裁判所から会社に対して、差押えられた部分については貸金業者などに対して直接支払うように通知がなされます。
そのため、会社には、給与の差押がされているということは確実に知られてしまいます。
差押えをされたことを理由に、会社から懲戒処分をされるという可能性は低いです。
もっとも、上司や同僚などの周囲の方からの信用を失う、金銭トラブルのイメージを持たれる、昇進に影響するなど、事実上の悪影響を受けてしまう可能性は否めません。
また、会社だけでなく、家族にもバレる可能性は高いです。
債権者から民事裁判を起こされたときや、差押えがされたときには、借主の方のご自宅に通知が届きます。
書留のような形式で送られてきますので、家族が見てしまう可能性もあります。
さらに差押えがされたときには、手取り額が減りますので、それを通じて家族に知られてしまう可能性もあります。
給与を差押えられたならば、転職すればそれを逃れられるのではないかという疑問をお持ちの方もおられるでしょう。
しかし、実際にはそれは難しいと考えた方がよいです。
まず、転職に先立って、元の職場から退職金が支払われる場合には、その分も差押えの対象となります。退職金の金額が多ければ、差押えで持っていかれる額も多くなります。
また、民事執行法上の財産開示手続などにより、転職先を債権者の方に調べられる可能性もあります。そうなると転職しても結局、再度給与債権が差し押さえられてしまいます。
給与の差押を回避する一番の方法は、当然ですが、借金を滞納しないようにしっかりと払っていくことです。
もし滞納してしまった場合でも、債権者からの督促などの連絡をほったらかしにしないことです。
督促に応じないとなると、債権者も裁判をして強制執行するしか取り立てる方法がなくなり、踏み切る可能性が高まります。
借金を返済計画どおりに返すのが難しくなってきたときには、早めに弁護士に相談し、債務整理を行いましょう。
弁護士に依頼して、任意整理や自己破産、個人再生などの手続を行うことで、給料が差し押さえられてしまうのを防ぐことができます。
借金の返済が苦しくなってきた方も、すでに滞納をしてしまっている方も、早めに弁護士に相談することが、借金問題解決への大きな一歩となります。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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