このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
自己破産を考えるケースでは、「これは浪費ではないか?」と思われる事情が見受けられることが多いです。むしろ浪費が全くないのに自己破産するというのは少ないかもしれません。
浪費があると、たとえば①同時廃止という簡単な手続きが認められづらくなる、②破産管財人との面接で浪費の内容を追及される可能性がある、③免責不許可になる(=借金帳消しにしてもらえない)可能性があるというような影響が、自己破産手続きの中で出てくる可能性があります。
もっとも、浪費があるからといって直ちに免責不許可になるわけではありません。裁判所や破産管財人の指示に従って誠実に対応すれば、自己破産手続きが問題なく完了して、免責を受けられる(=債務を払わなくてよくなる)ことが多いです。
浪費になるのは●円以上、というように法律で決まっているわけではありません。これ以降で取り上げる浪費というのは、分不相応な浪費とか、傍から見ていておかしいほどの浪費というようなイメージのものです。
自己破産手続きでは、破産管財人が選任される形が原則です(管財事件)が、一定の場合には同時廃止という簡単な手続きで進めることができることもあります。浪費が著しい場合には、破産管財人による免責調査が必要だということになり、同時廃止で進めることは難しくなります。逆にいえば、浪費と言ってもさほどでない場合には、同時廃止を裁判所に認めてもらえる可能性はありえます(東京地裁の場合、20万円以上の資産がないことなど他の条件があります。)
東京地裁の管財事件(同時廃止ではない場合)では、裁判所が選任した破産管財人(弁護士)との面接を受けなければいけません。最終的に免責(=借金からの解放)をもらえるかどうかは、管財人の意見が大きく左右します。
管財人面接ではたとえば、どうして自己破産することになったのか(借入れの原因)、銀行取引の内容の詳細、現状の家計支出、といった諸々の点について質問を受けることになります。特に現在でも浪費が続いているのではないかと疑われるような場合には、管財人から厳しく指摘が入るでしょうし、最悪の場合には管財人に免責に反対されてしまうかもしれません。そうなると、自己破産したのに免責をもらえない=借金から解放されない結果になってしまいます。
著しい浪費は免責不許可事由にあたります。誰が見てもおかしいほどの支出をしたわけですから、借金を帳消しにするのはおかしい、ということです。過去の裁判例では、3000万円の借金があるのに更に3000万円以上を借り入れて株式投資したことは浪費であり、免責不許可事由があると判断されたものがあります(東京高決H8.2.7)。
もっとも、浪費という免責不許可事由がある場合でも、裁判所が裁量で免責してくれる可能性があります(裁量免責)。上記東京高裁決定でも、退職金や自宅売却代金を債務返済に充てたことなどが考慮されて、最終的には裁量免責が認められています。
裁量免責は裁判所が決める事柄ですが、実際には破産管財人の意見が重要視されます。そのため、裁判所はもちろん破産管財人に対しても誠実に対応しておかないと、裁量免責を受けることは困難です(=免責不許可になります)。裁量免責にあたっては、浪費のひどさ、破産管財人への協力の程度、生活態度が改まっているかどうか、といった点が考慮されます。もちろん、たとえば管財人面接でウソをついたり管財人の指導に従わなかったりというのは言語道断です(虚偽説明や非協力は、それ自体が免責不許可事由になってしまいます。)。
浪費といっても、不要不急の支出や無駄遣いをしていたという位のことでは、ただちに自己破産手続きに影響が出るわけではありません。
浪費の程度によっては、同時廃止という特例(簡単な手続き)を受けられない可能性が出てきますし、管財手続では、破産管財人から破産に至る経緯や現在の家計などについて厳しく指摘を受けることもあるでしょう。
浪費が著しく誰が見てもおかしいだろうという程度のものである場合、その浪費は免責不許可事由にあたります。しかし、裁判所や管財人に対して誠実に対応して手続きを進めて行けば、裁量免責を認めてもらえる可能性は十分にあります。あきらめる必要はありません。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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