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自己破産で仕事への影響は?

自己破産すると仕事に影響はある?

「自己破産すると会社をクビになるのですか?」「破産したことが会社にバレるのですか?」と聞かれることが良くあります。しかし、メーカーのような一般企業において自己破産が理由で解雇というのは無効の可能性が高いですし、破産したらその連絡が自動的に会社に入るわけでもありません。そのためごく一般論としては、自己破産による仕事への影響を心配しすぎる必要はありません。

もっとも、仕事が特殊な職業(例えば一部の国家資格者)の場合には、一時的にその仕事につけなくなることがあります。また、会社からの借入れがある場合や官報を細かくチェックしている会社に勤務している場合には、自己破産したことが会社にバレる可能性があります。あと、全く別の話ですが、自己破産の手続きは平日に行われるので、必要に応じて会社を休むなどして対応しなければなりません。

仕事への影響①特殊な職業(制限職種)

代表的なものとしては、司法書士(司法書士法5条)、行政書士(行政書士法2条の2)などの士業、生命保険募集人や損害保険代理店(保険業法279条)、古物商(古物営業法4条)、警備員(警備業法14条)などが挙げられます(その他にも多々あります)。取締役も、自己破産すると退任しなければなりません(ただし新たに取締役に選任されることは可能です。)。ちなみに何が制限職種に当たるのかは、破産法で定められているわけではありません。行政書士法、保険業法といった個別の法律で定められています。

こういった職業(制限職種)についている方の場合は、自己破産によってその仕事ができなくなるという影響が出てくることになります。もっとも、仕事ができなくなるのは「破産手続きが終わるまで」の一時的なものです。今「破産手続きが終わるまで」と言いましたが、それをもう少し正確に言うと「復権するまで」ということになります。

復権(破産法255条)というのは、ごく簡単に言うと「あなたはもう破産者ではありません」とお墨付きをもらうことです。復権すれば、職業の制限はなくなります。いつ復権するのかというと、免責許可が確定した時です(ほとんどの場合がそうです)。非常にざっくり言えば、免責審尋期日(あなたが東京地裁に出向く日)から1ヶ月程度、自己破産手続きを申立てた時からいうと3~6ヶ月程度です(債権者集会続行となるような場合は長くなります)。なお、免責許可が確定した後であっても、その後に免責取消しとなると復権もなくなります。

特殊な職業の方であっても、例えば会社に説明して一時的に(資格を必要としない)別の部署で勤務させてもらうなどの対応ができることもあります。それができず、その仕事を継続できないと困る場合には、自己破産手続きではなく任意整理や個人再生を検討すべきかもしれません。

(参考)復権には、(1)当然復権と(2)申立てによる復権の二種類があります。(1)当然復権は、①免責許可決定確定、②同意破産手続廃止確定、③再生計画認可決定確定(破産手続開始後に再生手続が開始された場合)、④破産手続開始後、詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年経過、のいずれかがあれば復権します。(2)申立てによる復権は、破産債権者に対する債務の全部を返済するなどして責任を免れたとき、破産者が裁判所に申し立てることで復権します。

仕事への影響②会社から借入れがある場合など

自己破産が会社にバレるのは、主に①会社から借り入れがある場合、②官報を細かくチェックしている会社に勤務している場合です。

会社からの借入れ

自己破産手続きでは、会社からの借入れがあると、会社を債権者として申告しなければなりません。借入れ先が銀行であろうとカード会社であろうと会社であろうと、債権者として等しく取り扱うことになります。そして債権者として会社を申告するということは、裁判所からの通知が会社に届くことになるので、あなたが自己破産したことがバレてしまいます。なお、「会社からの借入れ」と言っていますが、たとえば公務員が公務員共済から借り入れている場合も同じ危険性があります。

官報を細かくチェックしている会社

自己破産すると官報に住所、氏名などが掲載されることになります。官報を詳細に見ている人は少ないですが、会社によっては細かくチェックしているところもあるようです。たとえば生命保険会社は、多くの生命保険募集人(保険の外交員)を抱えていますので、従業員が破産していないか官報をチェックしているようです(破産により、生命保険募集人としての仕事をさせることができなくなってしまうので)。

それ以外の場合

会社からの借入れがなく、官報を細かくチェックしない一般的な会社に勤務している場合には、自己破産したことが会社にバレる可能性は低いと思われます。

仕事への影響③自己破産の手続きは平日実施

自己破産の手続きは平日に行われますので、必要に応じて仕事を休むなどして出席・対応する必要があります。また、自己破産を申し立てるところから終了までの手続きを進めて行くためには、申立代理人(=自己破産手続きを依頼した弁護士)との打合せも必要になってきます。

免責審尋(同時廃止)

東京地裁に自己破産を申し立てて同時廃止が認められると、指定された免責審尋期日に裁判所へ出頭することになります。免責審尋というのは、免責(=借金からの解放)を与えてよいかどうかを裁判所が判断するためにあなたから事情聴取すること、です。そう言うと緊張してしまうかもしれませんが、実際にはごく簡単な質問をされるだけです。免責審尋が行われるのは平日のみです。

管財人面接

管財事件となる場合、破産管財人(裁判所が選任した弁護士)との面接が設定されます。原則として破産手続開始決定日までに実施することが求められています。面接では、破産の経緯や今の家計状況などを確認されます。多くの場合、破産管財人弁護士の法律事務所で平日に実施されます。大きな問題がない場合には30分程度で終了します。

免責審尋&債権者集会(管財)

管財事件の場合、特段何もない場合であれば、債権者集会と免責審尋が同じ日時で実施され1回で終了します。債権者集会というのは、管財人が調査結果を報告したり債権者が意見を言ったりする場として設定されるものです。たとえば管財人が自宅不動産を売却できておらず仕事を完了できていないような場合には、2回目以降が実施されることもあります。

申立代理人との打合せ

自己破産手続きを弁護士に依頼したらそれで終わり、ではありません。自己破産の手続きは裁判所に申立てをすることで始まりますが、それ以前に申立書(申立てに必要な書類)を作ったり必要な添付書類を揃えたり、あるいは申立て後も管財人からの課題・疑問に回答するなど、あなた自身でやるべきことも多いです。

自己破産の依頼を受けた弁護士(申立代理人)はあなたをサポートしますが、申立代理人から確認や依頼があればきちんと対応しないといけません。あなた自身がやるべきことをやらないと、申立代理人が「責任をもって仕事を進められない」ということで辞任してしまう(=あなた自身で破産手続きを進めないといけなくなる)こともあります。

まとめ

一般論としては、自己破産したことで会社をクビになったり破産が会社にバレたりすることはありませんので、仕事に大きな影響が出ることはありません。もっとも、自己破産の手続きは平日日中に行われますので、都合をつけて出席・対応することが必須です。

特殊な職業の方の場合、復権するまで(免責許可が確定するまで)は、その仕事につけなくなる可能性があります。別部署で仕事をさせてもらうなどの協力を会社から得られないのであれば、任意整理や個人再生を検討すべきかもしれません。

自己破産が会社にバレてしまうのは、主に会社から借入れがある場合や、官報を詳細にチェックしている会社に勤務している場合です。

自己破産が仕事に影響するということは、ごく一般の企業に勤めており会社からの借入れがないのであれば、さほどないといってよいかと思われます。

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

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