このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
破産手続きについては、「同時廃止事件」と「破産管財事件」に大別されます。
破産管財事件では、破産管財人が破産する方の財産の換価・配当などを行います。対して、同時廃止事件では、換価・配当できるほどの財産がないため、そのような手続きを経ることなく破産手続きが終了します。
これから破産を行おうとする方にとっては、破産管財事件ではなく、同時廃止事件として扱ってもらえるように狙いたいところです。なぜなら、同時廃止事件には次のようなメリットがあるためです。
破産管財事件の場合、破産管財人に対する報酬として、予納金を収める必要があります。予納金は最低でも20万円程度、事案によっては50万円~それ以上かかります。
同時廃止事件の場合、破産管財人が選任されず、破産管財人の報酬が生じませんので、予納金は低額に抑えることができます。
同時廃止事件の場合、財産の換価・配当がありませんので、破産管財事件と比較して、申立てから免責を得られるまでの期間が短くて済みます。一般的には、同時廃止事件の場合、申立てをしてから2~4か月程度で破産手続きが完了します。
破産法上は、破産管財事件が原則で、同時廃止事件が特則という扱いのため、一定の換価・配当できる財産がある限り破産管財事件となります。
同時廃止事件と管財事件の振り分け基準については、各地方裁判所ごとに異なるルールが設けられています。以下に、一例として振り分け基準の例をご紹介しますが、実際に申し立てる際に適用される基準については、各地の弁護士ないし裁判所にご確認ください。
裁判所のなかには、「20万円」という金額をひとつの基準としているところがあります。
これは、現預金・不動産・自動車・動産・保険の解約返戻金などの各種の財産の、それぞれの種類ごとの合計金額が20万円以上か否かという基準です。
20万円を超える項目が1つでもあれば、破産管財事件に振り分けられることになります。
現金・預金については、20万円以上の所持が認められていることがあります。
その金額については、30万円や50万円など、裁判所によって異なります。
以下の類型は、振り分け基準においては同時廃止事件になるとしても、管財事件となる可能性があります。こちらも各地方裁判所によって、扱いが異なりますので、一例としてご紹介いたします。
個人事業主の場合、財産や取引が事業のためなのか私生活のためなのかはっきりと分けられないことが多く、その実態を把握するための財産調査を行うことが望ましいです。そのため、個人事業主の破産については破産管財事件となる可能性が高くなります。
破産に至る経緯や資産の内容などにあやしい点があり、破産管財人の調査によって疑問点を解明しなければならないと判断される場合には破産管財事件となる可能性が高くなります。例えば、保証債務や住宅ローン以外で高額な債務がある場合には、一定の信用力があったことがうかがえ、これに見合った財産を持っている可能性が高いので、資産調査の必要があります。
偏頗弁済や、意図的な財産減少行為などの疑いがあり、否認権の行使が可能かを破産管財人が調査する必要がある場合には、破産管財事件となる可能性があります。否認権とは、破産手続開始前に破産者による行為の効力を否定して、破産者の財産を取り戻し、債権者への弁済に充てられる財産を確保する権能のことをいいます。
法人代表者についても、個人の財産と会社の財産の境目があいまいになりがちなため、破産管財人による財産調査が必要となり、破産管財事件となる可能性が高くなります。
同時廃止事件として申し立てられたとしても、現状では免責不許可事由が存在し、免責されないような事案において、裁量免責を受けさせるために、破産管財人による免責不許可事由の調査、生活状況についての指導監督などが必要とみられる場合、破産管財事件となることがあります。たとえば、ギャンブルや浪費がうかがわれる事案について上記のような扱いがなされることがあります。
同時廃止事件に持ち込むためには、様々な基準を満たさなければならないことがお分かりいただけたかと思います。
個人の破産の場合は、まとまった財産がないことが多いため、同時廃止を狙える事案も多くあります。
弁護士に破産申立てを依頼した場合、同時廃止事件となる可能性が少しでも高くなるように破産申立準備を進めます。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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