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自己破産で財産隠しがバレると詐欺罪になりますか

自己破産をすると、生活に必要最低限の部分を除いて、基本的にすべての財産が債権者への弁済に充てるために処分されることとなります。
破産される方の中には、負債と同時に資産をお持ちの方もおられるため、破産をしてもなんとかその資産を守りたい、とお考えの方もおられることでしょう。
しかし、財産を守るために、以下に解説するような「財産隠し」を行ってしまうと、自己破産が失敗してしまうばかりか、罪に問われてしまう可能性さえあるのです。
裁判所は、破産される方の財産を詳細に調査しますので、財産隠しをしようとしても発覚してしまいます。絶対に行わないようにしましょう。
この記事では、財産隠しはどのような犯罪にあたるのか、なぜ財産隠しは発覚してしまうのかを解説いたします。
 

1 財産隠しは犯罪となる

(1) 破産詐欺罪の基本

破産における財産隠しの態様は様々です。たとえば、次のような行為が財産隠しにあたります。
 

  • ・財産を所有しているのに裁判所に申告しない
  • ・財産を他人に譲渡したようにみせかけて、自分が所有者ではないように装う

 
こうした財産隠しは、破産法に定められている「詐欺破産罪」(破産法265条)にあたります。これは、いわゆる「詐欺罪」(刑法第246条。人を欺いてお金を騙し取るような行為)とは別のものです。
破産法第265条第1項には、次のように定められています。

破産手続開始の前後に関係なく、債権者の利益を害する目的で、次の行為をした者は、破産手続開始決定が確定したときは、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 

  • ・本人の財産を隠したり、壊したりする行為
  • ・本人の財産を第三者に譲渡したふりをしたり、債務を負担したふりをしたりする行為
  • ・本人の財産の現状を変更して、価値を低下させる行為
  • ・本人の財産を債権者の不利益になるように処分したり、債権者に不利益な債務を負担したりする行為

 
つまり、このような行為について詐欺破産罪が成立すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処され、又はこの両方が科されます。このように、非常に重い刑罰が科される犯罪とされているのです。
 

(2) 協力者にも詐欺破産罪が成立

破産法第265条第2項には、本人以外の者についての刑罰について規定されています。
本人について破産手続開始決定がされたことを知りながら、債権者の利益を害する目的で、破産管財人の承諾などの正当な理由がないのに、本人から財産を取得し、または第三者に取得させた者(=つまり協力者)についても、詐欺破産罪が成立します。同じように、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処され、又はこの両方が科されます。
 

2 財産隠しをすると、破産が失敗する

財産隠しをすると、刑罰を受けるだけではなく、破産手続において借金の免除(免責)を受けられなくなる可能性が高まります。
「免責不許可事由」があると、裁判所(破産管財人)の裁量により許可されない限り、免責を受けることができません。財産隠しは免責不許可事由に該当する行為の1つです。自分が破産すると分かっていながら、破産手続の理念(=破産者の財産の適正かつ公平な精算)と反する行為に及ぶわけですので、裁判所(破産管財人)からは厳しい目で見られることになりかねません。そうなると裁量免責を受けられず、破産したのに借金が残ってしまうことになります。
 

3 財産隠しはなぜ発覚する?

(1) 破産申立てに際して提出する書類から発覚する

破産申立てにあたって、破産者の方は、裁判所に対して、自らの財産の情報を記載した書類(財産目録)や、その裏付けとなる書類を提出することになります。裁判所は、これらの書類をくまなくチェックします。ある程度の財産があったり書類に不審な点があったりすると、管財事件となります。管財事件では破産管財人が選任され、下記のように破産管財人による資産調査がなされます。
 

(2) 破産管財人による調査による発覚

破産者の方にある程度の資産がある場合や資産状況に疑義がある場合などは、同時廃止事件ではなく、管財事件となります。管財事件に振り分けられた場合には、破産管財人が選任されます。裁判所から選任された破産管財人は、破産にあたって必要な情報を調査していきます。
破産者の方の財産も、破産管財人の調査対象です。預金口座、有価証券(株式など)、不動産、自動車、生命保険等々、色々な財産があるかもしれません。破産管財人の調査は、破産者の方が提出した書類や、破産者の方からの聞取りだけではなく、転送郵便物のチェックなどによっても行われます。
 
・預金口座…破産申立て時に、残高の有無にかかわらず預金通帳の写しを提出します。その内容から別口座の存在が判明することもありますし、転送郵便物から判明することもあります。なお破産管財人は銀行に対して直接照会をすることができるため、申告しなかった預金がないか調べることも可能です。
 
・株式などの有価証券…破産手続き開始後は、破産者の方宛の郵便物は、一旦破産管財人のほうに転送されます。その中に証券会社からの郵送物があれば、管財人が証券会社に照会することで、有価証券の保有が発覚します。
 
・不動産や自動車…不動産については、登記上の情報などから、所有権の移転時期などが分かります。自動車については、車検証や自動車税などにより、所有が発覚します。
・生命保険・個人年金等…給与明細や源泉徴収票、確定申告書類などに、生命保険控除の記載があることで発覚します。郵便物に保険会社からの郵送物があれば、そこから発覚することもあります。
 

4 まとめ

財産隠しは詐欺破産罪という重い犯罪にあたることや、財産隠しが発覚してしまう理由について解説いたしました。
自己破産・免責により、債務を返済しなくてよくなるという非常に大きなメリットが得られます。そのような大きなメリットを得られる以上、財産隠しなど考えず、公明正大に手続きに対応していくべきです。財産隠しによって免責不許可となってしまったら、元も子もありません。

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

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