このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
任意整理というのは、借金を整理する方法(債務整理)の一つです。終わりが見えない借金に目途をつけ、業者との契約どおりに返済するのと比べて支払総額を下げられる等のメリットがあります。その代わりに、いわゆるブラックリストに載ってしまうなどのデメリットもあります。
任意整理にはどういうメリットとデメリットがあるのか、以下で説明していきます。
任意整理というのは、借金の額をきちんと計算し直して、裁判所を通さずに業者と話をし、借金を単純な分割払いにするよう交渉していく手続きです。
かなり昔から取引をしている場合、利息制限法を超える利率で計算した利息を取られていた場合があります(いわゆる過払い)。過払いがあると、その分を現在の借金残高から差し引くことができます。たとえば今の借金残高が100万円でも、過払いが30万円ある場合なら、きちんと計算し直した借金の額は70万円ということになります。
(備考)過払い>借金残高の場合には、払いすぎたその差額(過払い金)を業者に請求することができます。
任意整理では、「70万円を毎月2万円ずつ払う形ではどうか?」というように、弁護士が業者と電話やFAXで交渉します。任意整理は自己破産や個人再生とは違って、裁判所を通すわけではありません。
(備考2)何回までの分割に応じてくれるのかというのは、業者がどこなのか、本人の年齢、勤務状況などによって異なります。
任意整理では、先の例でいうと70万円を分割して払っていくことになります。業者からお金を借りる時には当然利息が付きます。仮に業者との契約どおりに毎月2万円を真面目に払っているとしても、そのうちの一部は利息として払っていることになりますので、借金元本が2万円減るわけではありません。しかし任意整理では、借金元本が2万円減ることになります。
(備考3)業者によっては、将来利息カットに応じてくれないことがあります。
債務整理というのは借金を整理する方法をまとめた言い方です。任意整理以外にも、自己破産、個人再生や特定調停があります。自己破産は借金を返さないことを目指す手続きですから、借金を返していく任意整理とは違います。個人再生や特定調停は裁判所を通す手続きですので、裁判所を通さない任意整理とは異なります(借金を返していくという点では同じですが)。
(備考4)特定調停が用いられるのは、借りた本人自身で(弁護士を使わずに)債務整理をしていく場合がほとんどです。
任意整理に興味はあっても、デメリットが大きいのではと不安に思う方も多いようです。そこで、先にデメリットについて説明していきます。
任意整理をすると、信用情報機関に事故情報が載ります。いわゆるブラックリストに載るということです。
(備考5)他の債務整理手続き、たとえば自己破産や個人再生の場合にも、ブラックリストには載ります。ちなみに債務整理をしなくても、滞納が一定期間続くと、ブラックリストには載ってしまいます。
ブラックリストに載ると、新たに借入れをすることができなくなったり、ローンを組めなくなったり、カードが使えなくなったりします。一言で言えば、経済的な信用を失うということです。
(備考6)ブラックリストに載ったからといって戸籍に載るわけではありません。
家計をうまくやりくりして、滞納せず余裕をもって返し続けることができるなら、任意整理も債務整理も必要ありません。しかし、既に家計からの返済が厳しくなっているのに、ブラックリストに載るのが嫌だからと言って無理に返し続けようとすると、A社から借りたお金でB社に返済するというような自転車操業状態になり、借金の額があっという間に膨れ上がってしまいます。そうなると任意整理もできず、自己破産(や個人再生)を検討せざるを得なくなってしまいます(後述のとおり、任意整理だと借金減額幅が小さいからです)。
任意整理は、借金を長期間返していく手続きになります。自己破産なら借金を返さなくて良くなるのと比べると、どうしても負担は重くなってしまいます。言い換えると、それなりの安定した収入がないと、任意整理をすることは難しいでしょう。
任意整理では、過払いがない場合、大雑把に言って平成20年ころ以降に初めて借りた場合には、借金を大きく減額することは難しいです。
(備考7)ただし後述のとおり、将来発生する利息をカットできるというメリットはあります。
借金を大きく減額したいなら、自己破産や個人再生を検討することになります。特に自己破産で免責を受けることにより、借金は原則ゼロになります。
任意整理には業者への強制力がありません。分割払いや将来利息カットを拒否している業者に対して、これらを強制できる力はないのです。任意整理に協力的ではない業者からの借入れが多い場合には、自己破産や個人再生を検討したほうがよいこともあります。自己破産や個人再生は裁判所を通す手続きですので、借金を強制的にカットする力があるからです。
既に述べたところと重複するところもありますが、簡単にまとめると次のとおりです。
任意整理に限りませんが、債務整理を弁護士が受任したという通知(=受任通知)を業者に送ると、送った先の業者から本人に対する取り立てが一旦ストップします。一時的にですが支払を止めることができますので、その間に家計を見直して立て直す時間的余裕が生まれます。
(備考8)言うまでもなく、それだけでずっと止めておけるわけではありません。送付しただけで任意整理の話し合いに着手しないでいると、業者のほうが法的手続き(訴訟提起など)を取ってくる可能性があります。
これも任意整理に限らないのですが、債務整理をすると業者から取引履歴を取り寄せ、過払いがあるかどうかをチェックします。その結果過払いがあれば、借金元本が減る可能性があります。場合によっては借金元本がゼロになったうえで、過払い金を業者から回収できるかもしれません。
(備考9)過払いが無い場合に借金元本を減額してもらえるかというと、一般的には厳しい傾向にあります。
任意整理をすると,基本的には単純な分割払いになりますので,返済に終わりが見えることになります。リボ払いで返しても返しても減らないというような話もありますが,そのような終わりのない状況に終止符を打つことができます。
任意整理は弁護士が業者と話し合う手続きですので、裁判所を通さずにすみます。自己破産や個人再生では裁判所が関与することになり、注意しなければならない点や制限も多くなります。
任意整理の場合、A社は任意整理するがB社はしない、ということもできます。しかし自己破産や個人再生の場合には、選ぶことはできません。
(備考10)いくら選べるといっても、A社だけ任意整理しても抜本的解決につながらない場合もありえます。
任意整理では、残額を単純に分割して支払う形になる=将来発生する利息はカットしてもらえることになります。業者との契約どおりに払っている場合には支払額の一部が利息に充当されてしまうのと比べると、メリットがあることになります。
(備考11)前述のとおり、将来利息カットに業者が応じてこない場合もあります。
これを任意整理のメリットというべきかどうか微妙なところですが、ブラックリストに載り以後借入れができなくなるため、借金に頼る生活から否が応でも脱却しなければならなくなる、という効果もあります。
(備考12)任意整理をしたときだけではなく、自己破産や個人再生のときもブラックリストには載りますし、債務整理をしなくても長期滞納した場合などには載ることになります。
任意整理は、債務額(過払があれば差し引いた残額)を単純な分割払いで支払っていく手続きです。デメリットは、ブラックリストに載ること、返済を長期間続ける必要があること、借金減額幅が小さいこと、業者と話をまとめられるとは限らないことです。メリットとしては、受任通知で支払いを止めて家計状況を立て直すことができますし、任意整理する対象を選んで裁判所を通さず処理できることなどです。あなたの場合にどういうメリット・デメリットがあるのか、弁護士に相談してみることをお勧めします。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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