このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
任意整理では、弁護士が依頼者の方からご依頼を受けて、金融機関などの債権者との間で新たな弁済計画についての示談交渉をし、合意を目指します。
任意整理の大まかな進み方は次のとおりです。
• ①弁護士との面談
• ②委任契約書の締結
• ③受任通知の発送
• ④取引履歴の開示請求
• ⑤利息制限法による引き直し計算
• ⑥-a弁済和解案の提示(借金が残る債権者)
• ⑥-b過払い金請求(過払い金のある債権者)
• ⑦任意整理の示談成立
• ⑧弁済金、弁護士報酬の支払い
任意整理を依頼してから示談がまとまるまで、どれくらいの時間が掛かるのでしょうか?
任意整理を依頼すると弁護士が債権者に「受任通知」を送付します。そこから任意整理の示談がまとまるまで、おおよそ3か月~半年程度かかります。債権者数が少なかったり、債権者が取引履歴(債権調査票)を早期開示してきたりしたような場合などは、もっと早く任意整理の示談をまとめることが可能なこともあります。
借金の返済が間に合わなくなってきてしまい、なんとかしたいと考えたら、借金問題に詳しい法律事務所に法律相談に行きましょう。
(備考)日弁連の規程により、借金問題に関しては、弁護士との直接・対面での法律相談が必要とされています。
法律相談において、弁護士からは、借金・収入・家計・資産の状況、返済に充てる原資の有無などについて聞き取りが行われます。
そのため、ご相談にあたっては、借金についての契約書や明細表、最近の給与明細、お持ちの資産に関する書類などをお持ちいただくと、ご相談がスムーズに進むかと思います。
事情によっては、任意整理ではなく、他の債務整理手段のほうが適している場合もあります。弁護士に相談することで、ご自身に最も合った債務整理の手段を選ぶことができます。
弁護士との面談後、弁護士に正式に任意整理を依頼する場合には、弁護士との間で委任契約書を締結します。
委任契約書には、任意整理の弁護士費用(着手金や報酬金など)についても記載されています。しっかりと内容を確認するようにしましょう。
委任契約書を締結した後で、契約書で決められた額の着手金を支払います。着手金は分割払いで良いという法律事務所もあります(当事務所もそうです)。
着手金の支払いを確認すると、弁護士は債権者に対し、「受任通知」という書類を送ります。
(備考2)当事務所では、着手金が分割払の場合、(着手金全額ではなく)その1回目の支払いを確認し次第、受任通知を送付しています。
受任通知は、弁護士が依頼者から正式に任意整理の依頼を受けたことを、債権者に通知するものです。その中で、弁護士は、依頼者の方への連絡は弁護士を通じてするように伝えます。
受任通知を受け取った債権者(貸金業者,金融業者の場合)は、依頼者に対して直接借金の取り立てをすることができなくなります。そのため、債権者からの取り立てや督促はストップします(訴えの提起は別です)。
万が一、着手金を支払い終わる前に滞納すると、任意整理を進めて示談がまとまる前に、弁護士は辞任してしまいます。受任通知により債権者からの取り立てや督促が止まって一息つけていたのに、弁護士が辞任するとまた復活してしまいます。着手金に限りませんが、弁護士費用はきちんと支払うようにしましょう。
依頼者の方は、債権者からの取り立てが止まる期間を利用して、債権者への返済もいったんストップし、和解案に従って後日返済していけるように資金を貯めていきます。このような積み立てを行うことで、和解の可能性が広がりますので、弁護士の指示に従い、毎月一定額を積立て口座に入金するなどして、資金の確保を行います。
任意整理の受任通知を送ると同時に、弁護士は、債権者に対して取引履歴の開示請求を行います。
債権者から開示される取引履歴には、依頼者の方が借金をした時期、期間、金額、利息などの詳細な情報が記載されています。
弁護士が任意整理の受任通知を送付してから取引履歴が開示されるまでには、おおむね1~3ヶ月程度かかります。債権者によって早めのところもあれば遅めのところもあります。同じ債権者でも、顧客の取引状況によって早かったり遅かったりします。
取引履歴をもとに、弁護士は、「本当は借金がいくら残っているのか」を調べていきます。その金額が、任意整理を進めていくベースになるのです。
取引履歴を手に入れたら、弁護士は、必要に応じて利息制限法による「引き直し計算」を行います。
(備考3)一番最初の借入れからずっと利息制限法以下の利率で取引をしていた場合、利息の支払いすぎは無く、引き直し計算をする必要はないからです。
引き直し計算をすると、「過去に支払いすぎた利息(利息制限法違反の利息)を差し引いて借金がいくらあるのか」や「債権者に請求できる過払い金の有無、金額」が分かります。
引き直し計算をすると、利息の支払いすぎを差し引いた本当の借金の額が分かります。
たとえば任意整理依頼前に借金が100万円あったとします。引き直し計算をすると、過去に支払い過ぎた利息を差し引いた本当の借金の額は72万円だ、というように判明するわけです。このケースでは、72万円をどのように支払っていくか、という弁済和解案を提示することになります。たとえば36回払いで任意整理するなら、月々2万円を返済する和解案になります。
「任意整理依頼前の借金が100万円。借入れ当初から利息制限法以下の利率であった」という場合なら、100万円をどのように支払っていくか、という弁済和解案を提示することになります。たとえば36回払いで任意整理するなら、月々約2万8千円を返済する和解案になります。
「任意整理を進めていけば、この会社にこれくらいの返済が必要になりそうだ」ということを、本当の借金額を元に、仮に検討してみるわけです(⑦に続く)。
利息制限法による引き直し計算の結果、借金がなくなっているのに返済しすぎていたと分かることがあります。
借金はないのですから、債権者に対して返済する必要はもうありません。
むしろ逆に、借金がないのに返済していたお金について、債権者に対して返還を請求することができます。これを過払い金返還請求といいます。
過払い金返還請求は、示談交渉で進めることもありますし、訴訟で進めることもあります。
過払い金返還の示談がまとまったのなら、示談書を取り交わし、債権者から過払い金が入金されれば終了です。
過払い金返還訴訟を提起する場合には、裁判上の和解・判決などで訴訟が終了し、債権者から過払い金が入金されれば終了です。なお、当初依頼した任意整理とは別の弁護士費用がかかることがあります(報酬金の割合が上がるなど)。
すべての債権者について債務の内容が確定したら(本当の借金の額が分かったら)、弁護士と依頼者との間で、「どのような弁済和解案(支払計画)を提示するか」について協議を行います。
任意整理の弁済和解案は、一般論としては36(~60)回をメドに検討することになります。支払月額が低い=分割回数が多いほど、債権者から難色を示される可能性が高くなってしまいます。
弁済和解案の作成にあたっては、「正確な支払い可能金額はいくらなのか」ということを見極めることが重要です。ここを見誤ると、せっかく任意整理の示談(和解)が成立しても、その返済計画に従って返済することができず、任意整理をした意味がなくなってしまうからです。
正確な支払い可能金額を算定するための1つの手段として、家計簿(家計収支表)を継続的につけるという方法があります。このような方法についても、弁護士からアドバイスがなされますので、実践しましょう。
弁済和解案が弁護士と依頼者との間で固まったら、それぞれの債権者に提示します。
債権者のほうもその内容に合意すれば、示談(和解)成立です。
債権者がこちらの提示内容をのまなかった場合には、再提案、交渉を繰り返します。
一般的には、36回(3年)以内に完済する弁済和解案であれば、受け入れられる可能性が高いです。
債権者からは、勤務先、携帯番号などの個人情報の開示を要求されることがあります。その場合は、支払月額や支払開始時期などの条件を債権者との間で詰めておいたうえで、示談(和解)時に開示することになります。
任意整理の示談(和解)がまとまったら、その内容を記載した書面を取り交わします。債権者が作成した書面を弁護士のほうに送ってくることもありますし、弁護士のほうで書面を作成して債権者に送ることもあります。
任意整理の示談(和解)が成立して書面を交わしたら、弁護士の業務は実質的には終了します。
依頼者の方は、弁護士に対しては、委任契約書の内容にしたがって弁護士報酬(報酬金)を支払うことになります。
そして債権者に対しては、取り決めた返済計画どおりに返済していくことになります。
依頼者の方にとっては、むしろここからが真の頑張り時です。
一般的な和解内容では「支払いが数回遅れた場合には、即時に一括弁済となる」という内容の条項が含まれています(期限の利益喪失約款といいます)。支払が滞ってしまい一括で支払えと請求されてしまうと、せっかく任意整理したのに意味がなくなってしまいます。返済計画に従って、遅れのないようにしっかりと返済していくことが必要になります。
任意整理した後で滞納するとどうなる?どうしたらいい?任意整理の進み方を解説いたしました。
任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり裁判所を通さない手続きですので、柔軟な進め方をしていくことができます。実際に任意整理を弁護士に依頼するとどのように進んでいくのか、参考になれば幸いです。
任意整理のメリット・デメリットなどについては、別記事をご参照ください。
任意整理って?メリット・デメリットを解説します
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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